2つの自治体病院の統合は全国初である。ほぼ同じ時期にあり方検討を始めていたことから、自治体病院の統合が始まった。事業の進め方、敷地選定、病床数等の検討プロセスは、事例が無く、両市民や両議会で果てることのない議論が続いた。
新聞紙面には「断腸の思い」「苦汁以上の苦汁」と掲載されながらも、統合が進み、「短期間による開院」が構想通りであったことは、両市民による地域医療への思いの後押しがあったからである。
北面下がりの高低差約15mの斜面地に500床の病院と1,500台の駐車場を計画する。一般的な計画では、平地を最大限確保するために人口法面による造成工事 を必要とする。そこで、計画地を南北に2段に分け、駐車場を北に一般用と南に職員用、アクセスを一般用とサービス用とする「2段アクセス」とすることで、造成工事を75%減らし、緑地を2.8ha増やした。
竣工前の、秋に両市民を対象にした植樹祭を開催した。3,000人以上の方々が参加し、前面道路から病院エントランスに続くアプローチに沿った「緑の丘」に1本1本丁寧に植樹をおこなった。将来には、来院者を迎える豊かな緑量の丘となる。
ホスピタルモールの吹き抜け空間に設置したアート作品「こもれび」その製作過程で発生した「かけら」を集め、子どもたちが触れても傷つかないようにやすりを削り、仕上げの塗装をかけて、小児外来待合のアートワークとした。その製作には、病院スタッフ、現場の職員さん、設計スタッフが携わり、ひとつひとつ丁寧に仕上げた。
災害時の運用(ソフト)を病院と協議を繰り返し、その想定した内容を設計に盛り込むことで、投資効果の高いBCP対策を実現した。