DESIGN STORY

大田原市庁舎

震災復興のシンボルと
なる庁舎をめざして

市民のための防災庁舎を
実現するために

大田原市の旧庁舎は東日本大震災に被災したため、新庁舎の計画においては、災害に強く防災拠点となることが主要命題となり、加えて大田原という土地の魅力を体感できる新しい庁舎のあり方が問われた。
災害での経験を生かし、防災拠点機能の充実を軸とした新庁舎機能や、市民に愛される大田原らしい庁舎の実現に向けて、市民や市職員の方々と一体になって検討が重ねられ、震災から8年後の2019年に新庁舎は全面オープンを迎えることとなった。

  • 土地の魅力を体感できる
    居場所となる庁舎づくり

    那須連山を始めとした美しい自然に包まれ、那須野が原の大地がパノラマに広がる大田原の原風景を体感できる庁舎を実現した。また、大田原は弓の名手として名高い那須与一の出生地として知られており、その弓のような弧を描くシルエットが大田原ならではの庁舎デザインとなっている。執務スペースは南側にパノラマの景色が広がる解放感を享受でき、文字通り大田原の土地の魅力を実感できる。

災害に強い庁舎を
デザインする

東日本大震災に被災した経験を踏まえ、想定外の災害も想定した、災害に強いLCB庁舎を目指した。(LCB(Life Continuity Building )庁舎とは、BCPの思想をさらに進め、その後の人命、災害活動やその生活も継続可能な、安全を超えた安心な建物を実現する庁舎) 地震対策のみならず火災や水害対策なども想定し「建物の更なる安全性の確保」として、免震構造の見える化などを取り入れた中間免震構造を採用し、昨今のゲリラ豪雨対策も行った。内装材などの落下に対応し2次被害への対策も万全とした「建物内部の安全性の確保」として、大空間となる窓口エリアは「荷重が軽く万が一落下しても危険性の低い膜天井」とし、また、執務スペースを「天井自体の剛性を強化し、耐震性を高めた剛性天井」とするなど、来訪した市民だけでなく、市職員の方々の日常的な安全性向上を図った。また、インフラが遮断されても自活可能とする「ライフラインの自主確保」はもちろんのこと、災害時に速やかに災害活動拠点としての機能転換が可能な「災害活動機能の確保」を実現した。

  • 環境向上のシステムと
    人の手による省エネ庁舎づくり

    大田原市の気候風土を活かした環境性能の高い先進的な技術を取り入れると共に、特に執務環境の向上を目的とした省エネ庁舎づくりを行った。夏季の平均気温が30度を下回り、自然換気が可能な中間期を長く設定することができる敷地の特性を踏まえ、東西のコア部分の大半をエコボイドとして活用した自然換気システムを構築し、自然換気時でも執務空間の気温が2℃程度抑えられる換気促進を行うことで、我慢する省エネから、快適な省エネとなる環境の向上を実現することができた。
    また、同システムの一端を担う自然換気窓の手動開閉化やタブレット操作による照明制御を採用することで、環境向上システムだけでなく、人の手で省エネ活動に貢献できる仕組みを加味し、市職員の意識向上を図った。

  • 震災からの復興を祝う
    レガシーとなる庁舎づくり

    新庁舎の新たな門出を祝う「サクラ」をコンセプトとし、復興のレガシーとなる庁舎づくり行った。外装には桜色の移ろいを表現したせっき質のタイルや市民利用が主となる窓口ロビーや展望ロビーには山桜のフローリング、議場やエントランスロビーにはカバ桜の練付壁、サクラの花びらや葉をモチーフにしたベンチなどを採用し、県産材や市産材の利活用とあわせて市庁舎を彩っている。震災復興を主題としてスタートした整備計画だが、強固なイメージだけなく、木のぬくもりが感じられ、市民に愛される市庁舎になることを期待した。

竣工年
2019年
所在地
栃木県大田原市
延床面積
10,605m²
階数
地上9階
構造
S/一部RC/SRC

大田原市庁舎

大田原市庁舎の実績詳細を
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