DESIGN STORY

津市久居アルスプラザ

劇場法に則り計画された
日本初の劇場

DESIGN STORY

津市久居アルスプラザ

劇場法に則り計画された
日本初の劇場

  • 次世代のプロトタイプとしての劇場を目指して

    2006年に津市と合併した旧久居市の市役所跡地に建つ、文化複合施設。
    隣接する図書館と文化ゾーンを形成し、地域をつなぐ開かれた独自性ある文化芸術の創造拠点となるよう計画すると同時に、2012年に制定された劇場法の理念に則った施設のあり方が求められた。私たちは劇場法の理念に基づく次世代の地域公共ホールのプロトタイプとしてのあり方を提示することを目指した。劇場法の理念に則り策定された基本計画に基づくよう、基本計画よりあるべき施設としてのキーワードを抽出し、実現する為の方策を挙げて検証した。そのいくつもの方策を施設計画として構築し、浮かび上がった課題を検討と協議を重ねながらクリアし施設を実現させた。劇場法の前文では劇場等が文化芸術の場であると同時に、人々が共に生きる絆を育む為の地域文化拠点として位置付け、活力ある社会を構築する為の大きな役割を担っているとし、「新しい広場」として地域の発展を支える機能も期待されているとしている。この文化芸術の場に加え、地域文化拠点と地域の広場を実現させるために、人々が集い交流しながら、文化活動を活性化できる開かれた文化施設=地域の広場とした。

  • 気軽に立ち寄れる
    大屋根下の地域の広場

    大屋根の下に、ひさいアートスクエア(内部共用部)を中心として、720席の本格的な多機能ホールと平土間のアートスペース、本格的な展示が可能なギャラリーとガラス貼りの練習室・会議室群を離散配置した。大空間ワンルームの中に2層構成建物をつくることで、街中のいるような立体的でシークエンシャルな空間をつくった。明るく開放的な居心地のよい施設とするために、屋根の構造は地元流通木材(津市産杉105角)の耐震木格子と既製H鋼 のハイブリッドとし、軽快な大屋根とした。屋根の鉛直荷重を支える細柱上部に採光・自然換気・排煙を兼ねる大きなトップライトを配することで、柱の存在感を薄め、利用者の活動がより自由になるよう工夫した。また出入口を東西南北の各面への設置し、どこからもアプローチしやすく裏のない施設とすると共に、南側の既存の図書館に対しては文化ゾーンを形成すべく、久居アートスクエアの2層吹抜けの内部広場を配置し街に開かれたファサードとした。道路に面した東面にはカフェや情報ラウンジ、ホワイエなどを配置することで通りに賑わいを発信し、日常から人々が気軽に立ち寄れる集いやすい施設を目指した。

見る見られるの関係が
文化活動を活性化

久居アートスクエアに配置された練習室や会議室は、大屋根の下に箱のように独立して配置し、それぞれを取り囲む共用空間には居場所となるようにテーブルとイスを配置している。心地の良いその居場所には練習室や会議室の予約待ちの人々や活動が終わった後語らう人々、ホールの公演を見に来た人に加え、勉強にくる中高生や施設にふらっと立ち寄った人々も居れるよう数多くの場所を用意している。練習室や会議室等は大きなガラス壁で開放されていて、練習室や会議室等の利用者は共用部の居場所の人々と見る見られるの関係が発生する。互いが刺激を受けることにより、発表についての意識や新たな文化活動を起こすきっかけや協働することへのきっかけなど、文化活動の活性化を目論んだ。またそれと同時に活動が見えることで施設の賑わいが増すと共に、見ることを楽しみに集う人々が増え、施設の集客性も高まると考えた。

  • BLACK BOX / WHITE CUBE
    市民が発表しやすい場

    アートスペースは大ホールのリハーサル室機能を持つと同時に、それ自体単独利用として練習目的や発表目的で利用することを想定した。演劇を行う劇場のことをBLACK BOXと称すことがあるが、発表目的として演劇も行うことから、黒い箱として作り上げた。また、この施設は主に展示の発表を行う3分割できるギャラリー施設を有しており、美術館がWHITE CUBEと一般的に称されることから白い箱として配置した。この白い箱と黒い箱はどちらも市民の発表することをメインとする施設であるが、この二つを向かい合わせに配置し、その間に内部広場を設置し図書館側にはガラスで開いている。この内部広場は日常テーブル・椅子が配置される市民の居場所だが、単独で発表の場としても利用でき、さらに黒い箱と白い箱の両方共大きく扉を開いて一体利用することができるようになっている。市の美術展など大型の展示イベントの際にはこの3つのスペースを使い、大きな展示空間として利用することが可能。またその他の共用部もテーブル・椅子を移動することで展示などの発表空間としての利用を可能としている。西側の出入口は2階に大階段で繋がっているが、その階段でも屋外の発表を想定しており、ステージも設けている。

市民が使いやすい
劇場をつくる

市内のホールを分析し、久居地域に適した、「演劇・舞踏系を意識した上で、音楽にも伝統芸能にも対応した高次元の多目的ホール」として計画。充実した舞台特殊設備を備え、演劇・舞踏系の仕上げや設備に対応しながら、クラシックコンサートにも適したボックス型の平面形状とし、平土間席から天井高さ13mをとった響きのよい断面形状とした。客席は2層、サイドバルコニーは3層式とし、舞台の囲まれ感を重視した。視距離の最長が22.5mとした見やすく、舞台が近く感じられ、舞台と客席に熱気と感動を生みだす計画とした。前舞台にもなるオーケストラピットの設置や仮設の花道も設置可能とし、多様な演目に対応。客席数の可変により、空席が目立たず、市民が使いやすく、演者と観客の一体感が生まれる計画とし、オーケストラピットを前舞台として利用することにより、320席のピアノの発表会等に使いやすい規模となる。1階席のみを利用した場合は414席の講演会等で使いやすい規模、2階席も利用した全席利用で704席、オーケストラピット利用時は620席と外部から催物を誘致した際にも対応可能とした。

竣工年
2020年
所在地
三重県津市
延床面積
6,081m²
階数
地上3階
構造
S/一部SRC

津市久居アルスプラザ

津市久居アルスプラザの実績詳細を
こちらよりご覧いただけます。

お問い合わせ

弊社への依頼、相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。