福岡県の中央に位置(筑豊地方)する嘉麻市には、北部九州最大の川である遠賀川の源流がある。遠賀川の恵みを享受することで、古来より稲作文化が形成、近代からは石炭産業が発達した。周囲が山林で囲まれた嘉穂盆地内に位置し、季節・時間によって風向きが変化する盆地特有の風環境である。2016年4月の熊本地震を受け、九州内で実質的に最初に公告された市庁舎のプロポーザルが嘉麻市新庁舎計画であった。また、合併特例債活用期限の2020年3月竣工が求められていたため、自然的要因(熊本地震)と社会的要因(合併特例債)の狭間で計画を進める点も大きな特徴であった。以上のような背景から、遠賀川の恵みや盆地特有の環境を最大限に生かしつつ、安心・安全性確保とイニシャルコスト縮減を両立した合理的なデザインを追求した。時代背景・地域環境に対して純粋に応答することが、この市庁舎建築の姿勢としてふさわしいと考えた。
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▷扁平断面の柱梁のトリプルチューブ架構
▷気候特性を生かした環境配慮型中規模庁舎
▷景観デザインと光環境と両立した庁舎