DESIGN STORY

帯広厚生病院

省エネルギー
病院施設の
新しいモデル
ー環境計画と
設備計画の実現ー

  • 快適で災害に強い
    省エネルギーや
    環境負荷低減などを
    実現する医療施設

    帯広厚生病院は1945年に開設、1955年には前病院敷地に移転し、全国で最も広い二次医療圏である十勝の住民の方々の健康と命を守るため、診療機能の充実を図ってきた。
    「高品質な医療」、「医療人の育成」、「環境への配慮」を3本柱として整備の充実を図るため、2018年11月、現在地に病床数651床の病院を新築移転した。
    新病院は、機能的な医療機能構成や、災害発生時にも高度な医療機能が円滑に継続できるMCP(医業継続計画)の機能強化を図り、快適で災害に強く、省エネルギーや環境負荷低減などを実現するサステナブルな建築を目指した。

  • 帯広の気候

    設計は、その土地の気候の分析から始まる。
    帯広地方は、厳冬期には-20℃を超える国内でも有数の極寒地域であるが、夏期には外気温が32℃を超えるなど通年の寒暖の差が国内で最も大きい地域である。日中においても寒暖の差が激しく、昼間は冷房が必要でも夜間は暖房が要求される外気温となる場合もある。また、冬期には晴天日が多い地域である。
    これらの帯広の気候を熟慮し、環境計画としては外部に対して「ひらく(活かす)」と「閉じる」、設備計画としては「熱を無駄に捨てない」とを効果的に組み合わせ、省エネルギー、CO₂削減を図るとともに、療養環境の向上に貢献する。

  • 「ひらく(活かす)」と
    「閉じる」、
    「熱を捨てない」

    [ひらく(活かす)]:冬期も晴天日が多い特徴を活かし、光あふれる内部空間を計画。ガラスからの冷気の侵入やコールドドラフト及び結露防止を図るため、Low-e ガラス(空気層12mm)と高性能断熱サッシュを効果的に配置した。
    [閉じる]:冬期の-20℃を超える気候に備えて、外周廊下(熱的バッファーゾーン)を配置し、外壁には外断熱硬質ウレタン吹付60mmを用い、保温効果を向上した。
    [熱を捨てない]:1年365日の70%が暖房となる地域の負荷削減のために、①空調排気熱を無駄に捨てずに徹底利用、②院内で生じる冷房排熱を捨てずに温熱利用を大方針とした。

  • 「熱を捨てない」を、3つの
    「もったいない」で具体化

    ①院内で発生する熱を逃がさない。
    通常の設計では電気室やサーバー室及び冷蔵庫等を大気に放熱するが、「もったいない」と考え、熱回収ヒートポンプを利用して排熱を回収して暖房用温水として供給するシステムとした。

    ②空調排気熱をとことん利用。
    20℃前後の空調排気を未使用で大気に放熱するのは「もったいない」と考え、熱交換器によって熱回収して寒冷な取り入れ外気を昇温し、外気加熱負荷を軽減するシステムとした。

    ③空調排気を無駄に捨てない
    低層部の空調排気を大気に無駄に排気するのは「もったいない」と考え、1階の床面での暖房負荷を軽減するために免震ピット内に導いて免震ピット内の温度の低下を防いだ。

  • 性能検証と優れた
    省エネルギー性能の実現

    左の表中の中段は熱源設備の容量の構成を示す。熱回収ヒートポンプの容量は全体の9%に過ぎないが、下段の表に示す通り、年間に供給される温熱の58%を熱回収ヒートポンプが供給している。この結果、暖房及び給湯用ボイラーのガス消費量の削減に成功し、一次エネルギー消費量を大幅に削減している。
    2020 年の帯広厚生病院の実績値は、北海道の同規模病院施設より約16%低くなっており、省エネルギー化が図られている。

  • 設計者の思い

    医療施設の設計の経験25年と、寒冷地での豊富な設計実績の集大成として、この帯広厚生病院の設備計画を行いました。過去の設計において、医療施設では年間を通じて給湯加熱や冬季の暖房用の温熱源を必要としている一方で、電気室や医療機器や冷蔵から生じる冷房排熱を大気に放出していることを「もったいない」と思っていました。ヒートポンプの技術が進歩した現在において、この帯広厚生病院において、冷房排熱の有効利用が大幅な省エネルギー効果をもたらすことを証明できたと思います。空気調和衛生工学会においても評価を頂き、2021年度の技術賞振興賞を頂くことができました。

    環境技術本部 上席専門部長 横山 大毅

改修竣工年
2018年
所在地
北海道帯広市
延床面積
63,547m²
階数
地上10階
構造
SRC/RC/S

帯広厚生病院

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