DESIGN STORY

ダイバーシティ&インクルージョンの
ために出来ること

バリアフリー
デザインの実践

基準中心のバリアフリー

設計の実務において、ダイバーシティ&インクルージョンの実践としてまず浮かぶのは「バリアフリーデザイン」です。
バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」で建物や公共空間の整備基準が規定されています。廊下や階段の寸法、勾配、手すりやトイレなどハード整備の細かい基準を遵守して設計を進めます。これまでの設計プロセスにおいて、ハード整備に重きが置かれ基準を守ることがゴールとなっているケースが少なくありません。

パラアスリート社員 坂元智香選手と建築・まち体験検証

当社社員、パラ・パワーリフティングで日本の女子として初めての東京2020パラリンピックに出場経験のある坂元智香選手。車いすユーザーという立場から建物やまちを利用する際に様々な気づきや課題をこれまで感じてきました。当事者の感覚を設計者と一緒に体感する場をつくり、これからの建築・まちづくりに活かしていきたい!「基準中心のバリアフリー」から「使う人中心のバリアフリー」へ、建築・まちのバリアフリーデザイン体験検証を始めました。これまで当社で設計した建物を坂元選手や担当した設計者たちと一緒に巡り検証を行いました。ホテル、レストラン、オフィス、商業施設、駐車場、さらに公共交通やまちの公共空間など広く検証しました。

基準やマニュアルにはない
気づき

設計者も車いすに乗り、坂元選手と同じ目線、同じ動作で一つ一つの体験を行いました。
気づいたことをその場で出し合い皆で議論「どうすればもっと使いやすくなるのか。」
例えば、バリアフリールートが法令通り整備されているにも関わらずそのルート案内が不十分なことが多い、トイレに設置する手摺を視認しやすい色にするだけで使いやすさが向上、車いす使用者用駐車スペースにカラーコーンを置いて一般車両の駐車を防いでいることがよくあるが車いすドライバーにとってはコーンを移動させる行為が大きな負担、ホテル客室の手動カーテンの開閉は車いすでは難しいことがある、ホテル客室の家具は移動可能にするだけで利用者の状況に合せて最適化しやすくなる、ナチュラルポジション(無理しない格好で届く位置)が大切、など。もちろん障害の種類や度合いによって異なりますが、設計者も一緒に体験することで、身をもって使い勝手や安全性を実感し、できるだけ多くの人が安心して使えるようになるための効果的な設計を考えるきっかけとなりました。

  • 「運営への反映」と
    これからのこと

    今回検証をさせて頂いた幾つかの施設では、施設運営者の方にも立ち会って頂きました。長時間に渡る検証・議論にも熱心に耳を傾けお付き合い頂きました。最終的には検証で気づいた課題についてハード及びソフトの視点で設計者が改善案をとりまとめ、助言という形で運営者へご説明させて頂きました。運営者からは「非常に参考になります。できるところは明日からでも対応していきます。」とのお言葉も頂きました。これまでの基準やマニュアルを守るバリアフリーデザインから、ユーザーの立場に立った、より本質的なバリアフリーデザインの実践をさらに加速させて行ければと考えています。完成後の建物検証だけでなく設計段階での検証も始めています。さらに運営へのアドバイスや、地域やユーザーの身近な活動に参加した持続的な活動や姿勢につなげていく取組みも行っていきたいと考えています。建築・まちのダイバーシティ&インクルージョンを様々な視点で考えていきます。

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