DESIGN STORY

「企業がまちに開く」

実践 ―企業とまちの新しい関係について―

まちの豊かさへの課題

まちが豊かになっていくためには、そこに何らかの主体的な働き掛けや活動がないと難しいと感じることが少なくありませんが、それを住民だけの力で維持していくにはエリアによっては限界があると思います。大規模開発などでは開発事業者が中心となって地域のエリアマネジメント活動を行っていきますが、全ての地域にそういう活動があるわけではありません。住民だけでは難しいまちづくりに大きく力を発揮できるのが「企業」ではないかと考えています。どんな地域でも企業はあるものです。都心でなくても居住エリアでも企業が根を下ろし何かしらの拠点や関わりを持っていたりします。

企業市民

「企業市民」という言葉があります。経営学の言葉で「企業は利益を追求する以前によき市民であるべき」というものです。「地域においての市民であるという自覚を持つべきである」と。この言葉を企業活動の1つの軸に据えながら、企業が地元のまちづくりにもっと主体的に取り組めばまちが効率的に良くなるのではないか、と感じています。企業のまちへの関わり方が地域活動への「協賛金」のようなことではなく、「良き市民」的なスタンスで何ができるかを自ら考える。「社会貢献」だけの思想だと持続しないこともあり、もっと「自社が得意なこと、広めたいこと」のような専門領域の延長線上でできることから入っていけるとよいのではないか、ということを考え始め、当社でも実践を進めているところです。

逗子にある「旧本多邸」

神奈川県逗子市にある1938年に竣工した木造2階建の邸宅「旧本多邸」。久米設計創設者である久米権九郎が設計した「久米式耐震木骨構造」による建物。日光金谷ホテル、軽井沢万平ホテルに続く現存する「久米式耐震木骨構造」による3つ目の建物です。建て主であった本多様から建物を譲り受け、現在新たな利活用のための保存改修工事を進めています。豊かな自然を背景に佇む洋館建築の立ち姿は、永い歴史の中で地域の方々にも親しまれ、先ごろ登録有形文化財への登録も完了しました。

  • 逗子で始めていること

    改修工事を進めながら地域の方々を招いた見学会を開催するなど、古くから親しまれてきた建物について地元の方にもっと詳しく知って頂く機会を設けたり、逗子をフィールドに活動している方々とまちの未来の姿について議論をしたり、社員がまちに混ざりながら地域との関わりを拡げています。地域の方々に建物をつくるプロセスにも関わって頂きながら、オープン後の使い方について対話を重ねることで持続的な関係性を培っていければと考えています。2024年オープン後は、当社社員のサテライト・ワーケーションの場と合わせて、地域の方々、子どもから大人まで、既にある地域活動の新たな拠点として建物を開きます。当社社員が主体的に地域の活動・運営にも関わり、企業として得意なこと、できること、を少しずつ還元できればと思います。企業と地域が共に成長していく姿を目指しています。

  • 潮見での活動。
    企業とまちのこれから。

    久米設計の本社がある江東区潮見エリアでも活動を続けています。地域の子どもたちを本社に招きワークショップを開催しています。まちや建物について学んだり未来のまちをつくったりという体験を通じて、参加した子どもたちが「創る楽しさ」を感じ、少しでも「クリエイティブな未来」の実現につなげることができればという想いで活動をしています。
    久米設計という企業が得意なことは「創造すること」「デザインすること」。その得意を地域に還元することが地域の豊かさにつながると信じています。子どもたちが何らかの形で「創造的な社会」のつくり手になる一助になればと願っています。地域との関わりの中に社員の学びや発見、成長もあります。これからも企業とまちの関わり方の追求を続けていきます。「良き市民」を目指して更に活動を拡げていきたいと思います。

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