左:久米権九郎 銀座設計室時代、右上:久米式耐震木構造、
右下:地震学会機関紙表紙
創設者久米権九郎は1923年関東大震災の被害を考察し、留学先のドイツでの博士論文をもとにして、久米式耐震木構造を地震学会機関誌に投稿し、耐震性に富んだ新住宅の実現に努めた。私たち今現在の久米設計は、1995年阪神淡路大震災の被害に強い衝撃を受け、壊れない資産としての耐震構造を目指して130%耐震を提案し、さらに発展形として建物の機能保持、生活の持続性を目的にLCB建築(LCB:Life Continuity Building「生活継続建築」)を提案した。そして、LCB建築の実現のため、現時点の耐震技術として最も有効な構造システムと考えられる免震構造、制振構造の建物を提供し続けている。
弊社の免震構造への設計の取り組みは1993年からはじまり、約30年間で150件を超える設計実績となっている。免震構造は1990年代電算センター、研究所、医療施設に採用することが多かった。2000年以降は、博物館や庁舎、事務所などさまざまな用途に採用され、多種多様な免震構造が生み出されている。
安定した形態である連続アーチ構造の大屋根に覆われた博物館である。博物館の主要機能である展示、収蔵、研究部門を免震構造化し、大屋根の中に包み込んだ構造設計を採用した。外皮としての大屋根構造と免震構造部分には、隙間を設け、空気層としての断熱、免震構造としての揺れしろ(クリアランス)に利用している。
地下鉄直上に建てた研修施設である。限られた施工範囲の中に、安全で快適な建物を提供するために免震構造が採用された。直下にある地下鉄軌道に対して、地震時などでの影響を許容されるレベルまで抑制することも、免震構造の採用で可能となった。
地震、津波、台風などのあらゆる自然災害に対して、防災と減殺を、強く意識した金融機関の本店である。2階床下に免震部材を配置した中間層免震構造を採用し、災害時に建物機能を維持するための対策を施している。また、免震部材は、利用者から見えるように配置され、防災への意識を視覚的に提供している。
福岡県央に位置する庁舎である。庁舎としての安心安全確保のために基礎免震構造を採用し、落下の心配のないコンクリート直天井と、柱および梁型のないフレキシブルな執務空間が特徴である。遠賀川沿いの田園地帯の緑あふれる自然光を、フラットな天井面がからバウンドして室内に導くなど、周辺環境との調和も強く意識した建築である。